迎春平成己三十一年

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新年明けましておめでとうございます。

五月には元号もかわり新たなる時代の幕開けとなります。

 
古来インドでは一生を四つの時期分けて捉える思想があり、これを「四住期」といいます。

まず「学生期」、師のもとで学ぶ時期。次に「家住期」、家庭にあって子をもうけ一家の祭式を主宰する時期。

次に「林住期」、森林に隠棲して修行をする時期。

最後に「遊行期」、一定の住所をもたずに乞食遊行する時期。


私にとって昭和は、三十九年に生まれ、六十三年に本山修行を終えたまさに「学生期」。平成は、まさに「家住期」。

あと十年くらいは家住期が続そうですが、新しい時代を迎えるにあたり、身体も心も停滞することなく、いずれ来る「林住期」に向けて、今なすべきことに精進したいと思います。

 

共生(ともいき)・今を生きる

平成三十年の一年間を表す言葉に『災』が選ばれました。記録的大雪・大阪での地震・西日本豪雨・四十度を超える猛暑・台風・北海道地震など今年は本当に沢山の災害が日本各地をおそいました。

そして大勢の方が家族を失い・普段の日常生活を失い、心身ともに失意のどん底にあるなかで、この度もまた各地からボランティアの人々が参集してきました。特に今年注目をされた「スーパーボランティア(ご本人はきっと不本意な呼ばれ方と思っているでしょうが)」尾畠春夫さんの活動・言葉には心から清々しさを感じさせていただきました。

 

「自灯明(じとうみょう) 自らを灯とせよ」という佛教用語があるように、お釈迦さまは自己というものをとても大切に考えられました。しかしながら、決して自己に留まることを良しともされませんでした。

お釈迦様在世の時代のお話。

コーサラ国の王と王妃は共に「自分より愛しいものはない」という結論に達しました。しかし、この考え方は慈悲を説くお釈迦様の心に背くように思えてしまい、二人してお釈迦様を訪ねて答えを求めました。その時の言葉が『相応部経典』に書かれています。

「人はおのれより愛しいものを見出すことはできぬ。それと同じく他の人々も自己はこの上もなく愛しい。されば他のものを害してはならぬ」

自分と他人の間に壁を設けるのではなく、共に同等に大切な愛しい存在(すべて生きとし生けるものは佛性をもっている)であることに気付き、他を傷つけず、慈しんでゆきなさい、と説かれたのです。

 

我が国、日本においては古来『八百万の神々』といわれるように、人々は、生き物は勿論のこと、森羅万象この世のすべての存在に対して、聖なる存在を認め、畏敬の念を持っていました。このような大自然に対する心豊かな土壌のなかに、お釈迦様の説く『佛性の教え』が溶け込むことにより、いつしか日本人のなかに、偉大なる存在と人、人と人、人と他の生き物、人とモノとの間の『つながり』をとても大切にする精神性が熟成されてきました。

このことを私たちは一言『和 わ』と呼んでいます。

 

『共生』とは、自他を区別することなく、自分同様他者の存在を尊び、大切に思い、喜びも・悲しみも・苦しみも全て分かちあえると信じて、今を精一杯生きることではないでしょうか。

 
今年も皆さまが笑顔で、心安らかに暮らせる年になりますよう祈念申し上げます。

住職 長谷川 史道